資本金は「一時的にあればいい」ものではありません
「会社設立時に資本金は用意したけど、すぐに使ってしまっても大丈夫?」
「資本金はただの形式的なものでしょ?」
いいえ、それは大きな誤解です。資本金は、単なる会社設立の形式ではなく、会社の信用や財務基盤を示す重要な要素です。
資本金は、設立時の通帳に一時的に入っていれば良いというものではなく、事業を継続するための「運転資金」や「会社の体力」として、常に健全な状態を保つことが求められます。
資本金が重要な3つの理由
資本金は、会社の事業運営において様々な役割を果たします。特に重要な3つのポイントを解説します。
1. 会社の「信用」を示す
資本金は、会社の財務状況を示す一つの指標となります。取引先や金融機関は、会社の信用を判断する際に資本金の額を参考にします。
取引先からの信用: 資本金が多い会社は、倒産リスクが低いと見なされ、安心して取引してもらいやすくなります。
金融機関からの信用: 融資を申し込む際、資本金は返済能力の判断材料になります。資本金が少ないと、融資を受けにくくなることがあります。
2. 事業を始めるための「運転資金」
資本金は、会社設立後すぐに必要となる初期費用や、事業が軌道に乗るまでの運転資金として使われます。
設立費用: 登記費用、印鑑作成費用など
初期投資: オフィス家賃、備品購入費、広告宣伝費など
運転資金: 人件費、仕入れ代、交通費など
資本金が少なすぎると、事業が始まる前に資金がショートしてしまうリスクが高まります。
3. 会社の「体力」を示す
会社の資本金が多ければ多いほど、赤字や予期せぬ事態に耐える「体力」があると言えます。
資本金が潤沢な場合: 赤字が出ても資本金から補填できるため、事業を継続しやすいです。
資本金が少ない場合: 少しの赤字で債務超過(負債が資産を上回る状態)に陥り、倒産のリスクが高まります。
資本金はすぐに引き出してもいい?
会社設立時に資本金として振り込んだお金を、すぐに個人の口座に戻したり、事業と関係のない目的で使ったりすることは、絶対にしてはいけません。
資本金は、会社のお金であり、事業のために使うべきものです。不正に利用すると、法的な問題になるだけでなく、会社の信用を大きく失うことになります。
資本金はいくらが安心?
「資本金1円でも会社は作れる」と言われるように、法律上の最低資本金は撤廃されました。しかし、資本金は事業の規模や内容に合わせて慎重に決めるべきです。
一般的には、事業開始から3〜6ヶ月分の運転資金に加えて、万が一の事態に備えた資金を資本金として設定するのが良いとされています。
資本金が少ない場合(例:100万円未満):
メリット: 設立時の負担が少ない
デメリット: 会社の信用度が低く見られがち。融資や取引が不利になる可能性。
資本金が多い場合(例:1,000万円以上):
メリット: 会社の信用度が高く、取引や融資で有利になる。消費税の課税期間が長くなる。
デメリット: 会社の設立費用が増える。
まとめ
資本金は、会社にとって血液のようなもの。ただ一時的にあれば良いというものではなく、事業を継続し、成長させていくための大切な基盤です。
会社の信用を築き、安定した事業運営を行うためにも、資本金の重要性を正しく理解し、計画的に設定しましょう。