「年収」って何を指す?「所得」「手取り」との違いや計算方法を徹底解説!
「年収〇〇万円」という言葉をよく耳にしますが、この「年収」が具体的に何を指すのか、正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。さらに、「所得」や「手取り」といった言葉もよく使われますが、これらとの違いが曖然としている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらの言葉の意味を正しく理解することは、給与明細を読んだり、住宅ローンやクレジットカードの審査を受けたり、将来のライフプランを立てたりする上で非常に重要です。
この記事では、「年収」「所得」「手取り」のそれぞれの意味と違いを分かりやすく解説し、具体的な計算方法までご紹介します。これらの知識を身につけて、あなたのお金に関する理解を深めましょう。
1. 「年収」「所得」「手取り」の基本を理解しよう
まずは、それぞれの言葉の定義と、お金の流れの中でどの段階を指すのかを把握しましょう。
1-1. 年収(額面)とは?
「年収」とは、一般的に1年間(1月1日〜12月31日)に会社から支給された給与や賞与などの総額を指します。いわゆる「額面(がくめん)」と呼ばれる金額です。
含まれるもの:
基本給
残業代、休日出勤手当などの各種手当
賞与(ボーナス)
通勤手当(非課税限度額を超える部分)など
含まれないもの:
非課税通勤手当(多くの場合は全額)
会社からの福利厚生(住宅手当など)で現物支給されるもの
出張費などの経費
テレビや雑誌で「平均年収」といったデータが発表される場合、この「年収(額面)」が使われることがほとんどです。
1-2. 所得とは?
「所得」とは、年収(収入)から**「給与所得控除」を差し引いた金額**を指します。
所得税の計算をする上で非常に重要な概念で、税金は年収そのものにかかるのではなく、所得に対してかかります。
給与所得控除とは?
会社員にとっての「必要経費」のようなものです。スーツ代や書籍代など、仕事をする上で必要となる費用を、個別に計算するのは大変なため、年収に応じて一定額が控除される仕組みです。
簡単に言うと、所得 = 年収 − 給与所得控除 となります。
1-3. 手取り(差引支給額)とは?
「手取り」とは、年収(額面)から税金や社会保険料などが差し引かれた後、実際にあなたの銀行口座に振り込まれる金額のことです。給与明細では「差引支給額」と記載されていることが多いでしょう。
年収から差し引かれるもの(控除されるもの):
税金: 所得税、住民税
社会保険料: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上の場合)
手取りは、一般的に年収の75%〜85%程度になると言われています。年収が高くなるほど、税金や社会保険料の負担が増えるため、手取りの割合は低くなる傾向があります。
2. 「年収」「所得」「手取り」の具体的な計算方法と例
それぞれの概念をより深く理解するために、具体的な計算例を見てみましょう。
2-1. 年収(額面)の計算
これは非常にシンプルです。
年収 = 基本給 × 12ヶ月 + 各種手当(年間合計)+ 賞与(年間合計)
例:
基本給:25万円/月
残業手当:年間10万円
通勤手当:年間6万円(非課税枠内であれば年収には含まれないが、超える場合は課税対象)
賞与:年間50万円
この場合、年収は 25万円 × 12ヶ月 + 10万円 + 50万円 = 360万円 となります。
2-2. 所得の計算
所得は、年収から給与所得控除を差し引いて計算します。給与所得控除の金額は、国税庁のウェブサイトなどで確認できます。
国税庁の給与所得控除額の速算表(参考:現在の情報に基づく)
年収162.5万円以下:一律55万円
年収162.5万円超180万円以下:年収 × 40% − 10万円
年収180万円超360万円以下:年収 × 30% − 8万円
年収360万円超660万円以下:年収 × 20% − 44万円
... (年収が増えるごとに控除額の計算式が変わります)
例: 年収360万円の場合
給与所得控除額は、360万円 × 30% − 8万円 = 108万円 − 8万円 = 100万円
所得 = 360万円(年収) − 100万円(給与所得控除) = 260万円 となります。
この所得額から、さらに「社会保険料控除」や「生命保険料控除」などの所得控除が差し引かれ、最終的な課税所得額が決定し、それに対して所得税や住民税が課税されます。
2-3. 手取りの計算
手取りは、年収から、以下の金額を差し引いて計算します。
手取り = 年収 −(所得税 + 住民税 + 健康保険料 + 厚生年金保険料 + 雇用保険料 + 介護保険料)
例(概算): 年収360万円の場合(独身、扶養なし、東京都内在住、40歳未満の場合で概算)
健康保険料+厚生年金保険料: 年収の約15%程度(会社と折半なので、個人負担は約7.5%)と仮定すると、360万円 × 約7.5% = 約27万円
雇用保険料: 年収の約0.6%程度と仮定すると、360万円 × 0.6% = 約2.16万円
所得税・住民税: 所得約260万円からさらに所得控除(基礎控除など)が引かれた後の金額に対して課税されます。ここでは概算で年収の約10%程度と仮定すると、360万円 × 約10% = 約36万円
手取り = 360万円 − (約27万円 + 約2.16万円 + 約36万円) = 360万円 − 約65.16万円 = 約294.84万円
※これはあくまで概算であり、個人の状況(扶養家族の有無、加入している保険の種類、自治体、控除の種類など)によって変動します。正確な金額は、給与明細や源泉徴収票で確認しましょう。
まとめ:お金の用語を理解して賢くマネープランを!
「年収」「所得」「手取り」は、それぞれ異なる意味を持つ重要な金融用語です。
年収: 会社から支払われた給与・賞与の総額(額面)
所得: 年収から給与所得控除を引いた、税金計算のベースとなる金額
手取り: 年収から税金や社会保険料が差し引かれ、実際に受け取る金額
これらの違いを正しく理解することで、自分の収入状況を正確に把握し、より現実的なマネープランを立てることが可能になります。転職やローンの審査、確定申告など、様々な場面で役立つ知識ですので、ぜひこの機会にしっかりとマスターしておきましょう。