🙏もしも、どうにもならなくなったら…生活保護制度は「最後のセーフティネット」。申請方法・条件・よくある誤解をやさしく解説
「生活保護」という言葉を聞いたことはありますか?
ニュースで見たり、なんとなく知っていたりするけれど、「自分には関係ない」「なんだか難しそう…」「恥ずかしいことなんじゃ…」と、あまり詳しく知らない、または目を向けたくないと思っている方もいるかもしれません。
でも、生活保護制度は、病気やケガ、失業など、様々な理由で**どんなに頑張っても生活に困ってしまった人を支えるために、国が用意している「最後のセーフティネット」**なんです。決して特別な人だけのものではなく、誰にでも利用する可能性があり、そして、困った時に頼れる公的な制度です。
この記事では、厚生労働省の情報を基に、生活保護制度の基本を分かりやすく解説します。
- 生活保護制度って、一体何のためにあるの?
- どんな人が対象になるの?条件は?
- どんな支援が受けられるの?(もらえるお金やサービス)
- 「申請したい」と思ったら、どうすればいいの?
- 生活保護に関する「よくある誤解」をスッキリ解決!
これを読めば、生活保護制度に対する見方が変わるかもしれません。「困ったな…」と感じた時に、一人で抱え込まず、この制度を思い出すきっかけになれば嬉しいです。
生活保護制度って、何のためにあるの?
生活保護制度の目的は、日本国憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を、全ての人々が送れるように保障することです。
つまり、病気や高齢、失業など、様々な理由で生活に困ってしまい、自分自身の力や他の人からの援助、あるいは他の公的な制度(年金や失業保険など)を活用しても、どうしても生活を維持できなくなった人々に対して、国が、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障しつつ、一日も早く自分自身の力で生活できるようになる(自立する)お手伝いをする制度なのです。
これは、困った時に誰でも頼ることができる、**国民の「権利」**として保障されています。
どんな人が対象になるの?生活保護の条件を知ろう
生活保護は、「生活に困っている」と感じた誰もがすぐに受けられるわけではありません。生活保護を受けるためには、以下の4つの基本原則に基づき、様々な状況を総合的に判断されます。
- 能力の活用: 働くことができる方は、その能力に応じて働くことが前提となります。ただし、病気や障がいなどで働くことが難しい場合や、働いていても収入が国が定める「最低生活費」に満たない場合は、制度を利用できる可能性があります。
- 資産の活用: 預貯金、土地や建物(持ち家)、車、貴金属など、活用できる資産があれば、まずそれらを生活のために活用することが求められます。ただし、例外的に保有が認められる場合もあります(例:生活に欠かせない家屋など)。
- 扶養義務者の援助: 親、子、兄弟姉妹などの扶養義務者から援助を受けることができる場合は、まずそちらを優先することが求められます。しかし、扶養義務者がいても、様々な事情(音信不通、経済的な困難など)により援助を受けられない場合もあります。
- 他の制度の活用: 年金、雇用保険(失業保険)、各種手当など、他に利用できる公的な制度があれば、まずそれらを活用することが求められます。
これらのすべてを活用しても、なお生活に困窮する場合に、生活保護制度を利用できる可能性があります。「自分は対象になるのだろうか?」と悩むより、まずは相談してみることが大切です。
どんな支援が受けられるの?生活保護の「扶助」の種類
生活保護で受けられる支援は、単にお金が一律に支給されるわけではありません。健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な様々な費用について、国が定めた基準に基づき、世帯の状況に応じて必要な分が支給されます。これを「扶助」と言います。主な扶助は以下の8種類です。
- 生活扶助: 日常生活を送る上で必要な食費、衣類、光熱費などの費用です。
- 住宅扶助: 家賃や地代、持ち家の修繕費などの費用です。国が定める上限額があります。
- 教育扶助: 義務教育を受けるのに必要な学用品費や給食費などの費用です。
- 医療扶助: 病気やケガの治療に必要な医療費です。原則として自己負担なく医療を受けることができます。
- 介護扶助: 介護保険の対象となるサービスを利用する際に必要な費用です。
- 出産扶助: 出産に必要な費用です。
- 生業扶助: 就職に必要な技能習得の費用や、高校就学費用などです。
- 葬祭扶助: 葬儀に必要な費用です。
これらの扶助を組み合わせて、その世帯の状況に応じた「最低生活費」が計算され、収入がその最低生活費に満たない場合に、不足分が生活保護費として支給される仕組みです。
「申請したい」と思ったら、どうすればいいの?具体的なステップ
もし、あなたが生活に困窮し、「生活保護の申請を考えたい」と思ったら、以下のステップで進めることができます。
- まずは相談!: **住んでいる地域の福祉事務所(または市役所や町村役場の生活保護担当窓口)**に相談に行きましょう。電話での相談も可能です。現在の状況や困っていることなどを率直に話してみてください。窓口の担当者(ケースワーカーなど)が、生活保護制度について説明してくれたり、他に利用できる制度がないか案内してくれたりします。 一人で悩まず、まずは相談することが、問題解決への第一歩です。
- 申請: 相談の結果、生活保護の申請を希望する場合、申請書を提出します。
- 調査: 申請後、福祉事務所の担当者(ケースワーカー)が、あなたの資産状況、収入状況、働く能力、家族からの援助の可能性などを詳しく調査します。必要に応じて、銀行や親族などに照会を行うこともあります。
- 決定: 調査の結果に基づき、あなたが生活保護の受給要件を満たしているかどうかが判断されます。保護が決定した場合、決定通知書が送られてきて、生活保護費の支給などが始まります。残念ながら却下となった場合も、その理由が通知されます。
申請から決定までには、状況によって一定の期間(原則として14日以内、調査に時間がかかる場合は30日まで延長可能)がかかります。
生活保護制度に関する「よくある誤解」をスッキリ解決!Q&A
生活保護制度については、誤解や偏見も少なくありません。ここで、よくある疑問にお答えします。
Q1. 働けるのに生活保護は受けられないんでしょ?
A. 働く能力に応じて、働ける範囲で働くことが前提ですが、収入が最低生活費に満たない場合は利用できる可能性があります。
病気や障がいなどで働くことが難しい場合は、働くこと自体を求められません。働く能力がある方でも、働いても収入が国が定める「最低生活費」に満たない場合は、その不足分を補う形で生活保護を利用できる可能性があります。就労に関する支援も受けられます。
Q2. 持ち家や車があると、絶対に申請できないの?
A. 原則として活用可能な資産は処分することになりますが、例外もあります。
生活に困窮した場合、原則として活用できる資産(預貯金、不動産、車など)は売却するなどして生活費に充てることが求められます。しかし、生活に欠かせない必要最低限度の家屋(持ち家)や、通勤・通院に不可欠な車など、保有が例外的に認められる場合もあります。個別の状況によって判断が異なるため、まずは福祉事務所に相談して確認することが重要です。
Q3. 借金があると生活保護は申請できないんでしょ?
A. 借金があること自体が直ちに生活保護の対象外になるわけではありませんが、生活保護費で借金を返済することはできません。
生活保護費は、健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な費用として支給されるものであり、借金の返済に充てることは認められていません。借金がある場合は、任意整理や自己破産などの手続きが必要になることがあります。借金についても含め、福祉事務所に相談してみましょう。必要であれば、弁護士会や司法書士会、法テラスなどの情報も提供してもらえます。
Q4. 生活保護を申請すると、家族に連絡がいって迷惑がかかるの?
A. 扶養義務者への照会は原則行われますが、様々な事情がある場合は配慮されます。
扶養義務がある親族(親子、夫婦など)に扶養の可能性について照会を行うことは原則として行われます。しかし、DVや虐待の経験がある、長期間音信不通である、親族自身も経済的に困窮しているなど、様々な事情がある場合は、照会を行わないなどの配慮がされることもあります。まずは安心してご本人が福祉事務所に相談することが重要です。
Q5. 生活保護の申請は難しいって聞いたけど…「水際作戦」って本当?
A. 生活保護制度は、困窮した国民に保障された権利であり、申請は国民の権利です。困ったら遠慮なく相談してください。
残念ながら、過去には窓口での対応について様々な指摘がありましたが、厚生労働省は適切に制度を運用するよう自治体に繰り返し通知しています。生活保護の申請は、生活に困窮した国民の権利です。もし申請をためらうような対応があったとしても、諦めずに、改めて相談したり、別の窓口(地域の弁護士会、NPOなど)に相談したりすることも考えてみてください。制度は申請主義ですので、まずは「困っている」という状況を福祉事務所に伝えることが第一歩です。
まとめ:「困った」はサイン。生活保護制度を知って、一歩踏み出そう!
生活保護制度は、「どうにもならない」「もう無理かも…」と感じた時に、あなたの生活を支えてくれる、国が用意した温かい手です。決して特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。
病気、失業、高齢による生活苦…人生には予期せぬ困難が訪れることがあります。そんな時、一人で抱え込んでしまうと、状況はさらに厳しくなってしまうこともあります。
もし、あなたが、あるいはあなたの周りの大切な人が生活に困窮しているなら、この記事でご紹介した情報を思い出してください。そして、勇気を出して、住んでいる地域の福祉事務所に相談してみてください。
相談は無料です。あなたの状況を聞いてくれて、生活を立て直すための方法を一緒に考えてくれます。生活保護制度を正しく理解し、必要な人がためらわずに制度を利用できる社会であること、そして、困った時に「助けて」と言える社会であることの大切さを、改めて感じていただけたら嬉しいです。